在日コリアン人権協会 The Human Rights Association for Koreans in Japan.

『liber〜リベール〜』
142‐143号5・6月合併号(2008年5月25日発行)

収録内容

◎特集「特別永住者、『不法滞在』者を対象外とした新たな在留管理制度のうごき」
―99年在日コリアン人権協会改正案大綱を利用したねらいは何か―


 本年1月25日毎日新聞朝刊一面に、外国人登録法の大幅な改正のうごきが報道された。「外国人登録制を廃止」という大見出しに続いて、「カード・台帳に再編」「政府 世帯単位で把握」「年度内に骨子」という見出しが躍る。記事は総務、法務両省が外国人登録法に基づく在留管理制度を撤廃し、「日本人の住民基本台帳と同様の台帳制度に再編することを決めた」とし、「3月末までに新制度の骨子案をまとめ、来年の通常国会に関係法案を提出する。」と報道した。
 現行の外国人登録制度が個人単位で管理していることから、家族単位での把握が困難であり、住民サービスに活用しにくいという問題があるため、住民基本台帳に近い制度を検討することが改正の骨子である。これは1999年の外登法改正に向けて当会が作成した「外国人登録法改正案大綱 在日コリアン人権協会案」の中に盛り込まれていた内容である。当会は大綱案を法務省、衆参両院の法務委員会に提出し、それぞれ意見交換を行った。また、シンポジウムを開催し、世論にも働きかけた。結果、基本となる台帳方式は実現できなかったものの、いくつかの項目については法改正に盛り込まれた。続く今回の「改正」で、ようやく協会案が提唱した台帳方式が導入される予定となった。
 本年3月法務大臣の私的懇談会である「第5次出入国管理政策懇談会」が「新たな在留管理制度に関する提言」と題した報告書を発表した。報告書に記されている内容の中で最も注視すべき項目として、新たな在留管理制度は特別永住者以外の外国人が対象であり、台帳に関してのみ特別永住者(在日コリアン等)に適用するということである。であるならば、特別永住者に関する台帳以外の「在留管理」は果たしてどうなるのか。提言を読む限りは全く不明である。
 本号では、1999年に提案した当会の大綱と本年3月に発表された政策懇談会の提言の「基本構想」を紹介し、次号(7月号)にて内容の検討を行う予定である。

(資料1)外国人登録法改正案大綱 在日コリアン人権協会案
(資料2)外国人登録法に基づいて登録された韓国・朝鮮籍登録者の数値
(資料3)1999年5月20日に参議院法務委員会で賛成多数で可決された付帯決議「外国人登録法の一部を改正する法律案並びに出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案に対する付帯決議」
(総務省・法務省)適法な在留外国人の台帳制度についての基本構想

◎「福岡無年金裁判を闘うにあたって 在日障害者運動のリーダー 李幸宏氏に聞く」
―日本社会も危うい状況だけど、信じながらやっていったらいいんじゃないかぁ―

インタビュー:李幸宏(イ・ヘングェン)氏 ■閉ざされた進路
■民闘連集会を契機に本名宣言
■在日の生き方について
■運動はより戦略的な議論を
■次世代の在日への期待
■裁判闘争は世論化が重要
■日本国籍にこだわり過ぎず、生きる選択肢を

◎支援の会「在日社員本名裁判 和解勝利報告祝賀会」を開催

 本年3月25日、“在日社員本名裁判支援の会”主催「在日社員本名裁判 和解勝利報告祝賀会(以下、本会)」が開催された。本裁判は、日本大手住宅メーカー積水ハウスに勤務する在日社員の徐文平(ソ・ムンピョン)氏が顧客に本名の書かれた名刺を提示した際、民族差別発言を受けたとして、顧客を相手取り2006年7月31日に提訴したものである。
 本裁判は、在日コリアンが本名を隠さざるを得ない歴史的経緯を背景としていることから、この裁判を支援し、その意義を社会に伝えることを目的とする“在日社員本名裁判支援の会(以下、支援の会)”が昨年2月に結成され、当会も本裁判を側面的に支援してきた。
 本裁判の特徴は、徐文平社員の使用者である積水ハウスが社会的責任の観点から、本裁判の支援活動(訴訟費用の負担や、裁判に関する時間を勤務扱いにする等)を行ったことからマスコミによって大きく取り上げられ、ネット右翼をはじめとした「被告を支援する世論勢力」がうごきを見せたことだ。やがて積水ハウス本社前で抗議ビラが撒かれるなど右翼も動き出したことから徐文平社員は「身の危険に対する緊急避難」という配慮のもと、外勤から内勤への配置転換を強いられた。しかし昨年8月31日に和解判決が決定したことから徐文平社員の「緊急避難」解除が待ち望まれた。支援の会による積水ハウスへの働きかけも行い、徐文平氏など「在日社員」が本名で生き生きと暮らしていける社内環境づくりを訴えかけた。その結果本年2月、原職への復帰が実現した。
 本会は、こうした事実経緯や裁判の意義などを報告する「第一部 報告会」、前例のない和解決定(差別は許されないものとする司法判断)を祝う「第二部 祝賀会」で構成され、述べ80名ほどの参加者が会場を埋めた。参加者の構成は徐文平氏の友人、民族教育関係者、支援の会の呼びかけによって関心をもった支援者など。

■第一部 報告会
■第二部 祝賀会

◎第三回在日コリアン人権協会理論研究会のお知らせ

テーマ:アメリカにおける人権活動組織の財政運営のあり方及び日本との比較について(仮題)
日 時:2008年8月10日(日)13:00〜16:00
会 場:平野人権文化センター 2F会議室
報告者:柏木宏(大阪市立大学大学院創造都市研究科教授)
会 費:2,000円
詳細は当サイト内の「理論研究会のお知らせ」にて