■事業と運動の分立を

柏木 「徐さんの報告について、3つほどコメントしたいと思います。一番目は、行政の委託とか補助で解放同盟がだんだん事業に依存して、行政に異議を言えなくなってきているというような傾向があるという事についてです。私は今、人権問題もそうなのですけども、大学ではなく直接的にはNPOの方でやっていまして、NPOの観点から言うと、こうした傾向というのは特に人権団体などに限ったことではありません。ただ、今吉田先生も言われたように、管理費がないと仕事が出来ないから貰ったのは良いけれど、余計首を絞めてしまうようなこともあるのですけれども、ただそういう形に入ってきますと、行政の方でも末長く事業をしにくいというような状態が出てくるというのは、問題として挙がっています。それに対してどうやっていくのかということは、大きな課題としてあると思うのですね。
 そこで、やはり団体を分割してやっていくというのは一つの方法として有効だと思うのですね。つまり事業を受けることを中心にしているところと、運動を主として行うところという風に分けることによって、事業の方は事業で専念し、運動の方は運動に集中するという形になると思うんですね。ただ、その事業と運動というのは対立するものであるとか離れているものではなくて、事業をやる中で課題が発見されるということも幾らでもあるわけですよね。やっていく中で出てきた問題を如何に運動の中に還元して、運動はそれを現実的な課題として出していき、その改善を行政に要請する場合もあるだろうし、議会に法律として要請する場合もあるだろうし、あるいはまた自分たちが作り出していく新しい具体的な問題解決の手法のようなもの、そういうこともやはり提示していくということがあるのですね。例えで言うと、障害者の自立生活という考え方ですね。地域に自立して生活をするという。アメリカでは60年代までをほとんどの人が施設に入るか家で過ごすという風な形で、家にいる分には親が面倒を見るわけですけども、どちらかの選択肢しかなかった。ところが自立するためのプログラムを作っていくことは出来ないか?という事を言い出したのは自立生活運動の発端であって、それはNPOとして行政の資金を受けていきながら進んでいくというような事があったんですね。行政の資金を受けて自立生活を進めるためのサービス提供をする部分と、運動的にやっている部分を分けながら運営していくというような事があったんですね。そうした形で組織を分けながらそれぞれのアイデンティティーを持って、なおかつ、事業の中から発生した課題を常に運動団体にフィードバックしていく。また、運動の中で得た成果を事業の中に入れ込んでいく。そういうような考え方というのは非常に大切なんじゃないかという風に今思っております。」

← ■財政管理と運営について<目次>■多文化共生と運動の停滞の関連性 →