■対立を通じて理解を深める

柏木 「徐さんにも二度ほどアメリカに来ていただきましたけども、その時に案内させていただいた運動というのもいくつかありますけれども、例えば金融機関に対して地域での融資をきちんと還元していくというような。日本で言う貸し渋りみたいな事がありましたけれども、アメリカの場合ですと、CRA(地域再投資法)というような法律がありまして、その法律の下で運動体は色々な圧力を加えていくわけですけども、金融機関と話し合いをして、話し合いがなかなか進まなければ抗議行動を起こしたり議会に訴えたりとかいうようなことを含めて、金融機関にマイノリティの事業に対する融資の枠であるとか、あるいは低所得者向けの住宅の融資であるとか、あるいはまた、"マイノリティや都市にある問題"に対する課題を扱っているNPOに出す寄付というような事を積み上げさせてやらしていくというようなことを行っています。
 現実的には日本で考えられるより、はるかに大きな額の実行権融資というものが出ています。80年代後半から90年代の10年間でトータル八千億ドルぐらい出ていますけれども、八千億という額は1ドル100円と計算しても八百兆という額のマイノリティ事業向けの融資ほか低所得者向けの住宅融資・NPOに対する融資が出てきているんですね。それは一つ一つの銀行に対して働きかけを行うことによって、実を結ぶ形となるわけですけども、それは必ずしも多文化共生という風なことを否定しているわけではなくて、低所得者もマイノリティも同じ地域の住民として生活していくことが出来るようになったわけですね。それは、地域の中のお金を集めている銀行は、それを再投資していくべきだと。ある意味、行政がしていく部分なんだという事ですね。
 ただ、そこでは今吉田先生が言われたように『対立が無くて』ということではなくて、立場が違うんです。考え方や状況が違うのだから、あるいはお互いの認識が違うのだから、当然話し合いだけというのではなくて、話し合いで理解できない部分に関しては対立する部分もある。対立することを通じて、お互いの理解が深まる。そして、問題の解決に向かい合うことが出来るということもあるということですね。そういう事は踏まえないといけないと思っております。」

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