準備書面2

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2005年6月30日

目次

第1 在日コリアン人権協会について

在日コリアン人権協会は、1974年に結成された「民族差別と闘う連絡協議会(以下民闘連という)」を発展改組し、1995年の10月に設立された民族差別撤廃のための運動体である。会員は在日コリアン(朝鮮半島にルーツを持つもので日本国籍を含む)で構成され、会員から選出された理事が、役員を構成する。現在は会長1名、副会長2名である。
組織の前身である民闘連は、日本で初めて設立された民族差別撤廃のための運動体である。日立製作所による就職差別反対闘争を皮切りに、行政、企業、教育等あらゆる面における民族差別を撤廃させてきた。

第2 KJ同友会について

KJ同友会は、1993年10月に設立された在日コリアン商工業者の団体である。在日コリアン商工業者が、日本社会の排外主義的体質の下、大手企業の系列から不当に排除される傾向にあり、そのため業種が制限される等の状況にある。これら在日コリアン商工業者の権利を回復し、ビジネス上の機会均衡を確保すること、さらに、日常の経営、税務の相談等を行うことと、在日コリアン社会に貢献することを目的として設立された。
1999年、アメリカからグリーンライニング連合の顧問弁護士であるロバート・グネイズダ氏を招いて、「銀行とマイノリティの共生を求めるシンポジウム」(実行委員会主催、KJ同友会が事務局)を開催し、同年通産省(現経産省)委託調査「女性・高齢者企業家支援に係わる調査研究会」においてゲストスピーチを行った。2001年には「在日コリアンビジネスの活性化をめざして ベンチャービジネスの原点から」を作成した(但し、上部団体である在日コリアン人権協会の名前で出版した)。これらを通じて、在日コリアンをはじめとする日本社会のマイノリティに対するビジネスへの支援が、日本の経済を活性化させることを訴えてきた。
他方、日本企業の伝統的な排他的慣行に対して、在日コリアン商工業者の平等な参入チャンスを求めて活動し、いくつかの日本企業への事業参入を実現させてきた。会員の中から異業種交流会を組織し、そのメンバーを世話役とし、原告が会長を務めている。
2002年、経営上の観点から組織の再編成を行い、税務相談等の部門については廃止し、事業参入の取り組みを中心にして再出発した。

第3 「在日コリアン人権協会の指導」について

定期交流学習会の原点は、1997年に生起した差別事件にある。兵庫県尼崎市での解体工事へのKJ同友会会員企業の事業参入をめぐり、被告大成建設神戸支店の幹部の誤った対応によって差別事件が生起した(以下尼崎事件という)。この問題をめぐって在日コリアン人権協会が被告大成建設と事実確認会を行い、1998年3月31日、神戸支店長原邦彦が、続いて1999年6月25日本社取締役人事部長詫間博康が回答文を出した。双方ともに、在日コリアンの人権問題の一層の理解に務める旨の回答であったが、本社の回答文では「貴協会のご指導ご協力を頂きながら会社として今まで以上に在日韓国・朝鮮人問題を正しい歴史認識の上に立って理解を深めていきます。」と記している。
事実、この本社回答以降、毎年1回、本社において在日コリアンの人権問題に関する学習会を、原告を講師として継続してきた。一方、差別事件を風化させないため、地元である関西支店については、KJ同友会との交流・学習会という形で行ってきた。年によってはばらつきがあるが、基本的には年2回行うこととした。この交流・学習会についても、その内容については、在日コリアン人権協会が指導的役割を果たしてきた。

第4 定期交流・学習会の開催経緯とその内容

  1. 2002年1月31日、地元関西において「KJ同友会・大成建設株式会社関西支店合同学習会」が、被告大成建設関西支店において開催された。
  2. 2002年11月14日、被告大成建設関西支店管理部総務室長徳光隆(以下徳光総務室長という)と原告が、原告の事務所で改めて今後の学習会の方向性について打ち合わせを行った。そこで、毎年春に、被告大成建設関西支店とKJ同友会会員との合同学習会、交流会に行い、毎年秋には、原告を講師に招いて支店トップ層(幹部)の学習会を行うこととなった。その際の被告大成建設が原告に支払う講師料は、講演1回につき10万円とすることで合意した。なお、この点につき、平成17年5月31日付原告準備書面で、講師料10万円の合意が成立したのは2003年7月25日であるとの主張は訂正する。
    2002年の秋の学習会を年内に開催することは日程的に無理があったので、翌年2月に支店トップ層との学習会を行うことに決まった。また、2003年度からは4~5月に交流会、10月に支店トップ学習会を行うことになった。
  3. 2003年2月19日、支店トップ層との学習会が開催され、原告が「北朝鮮の在日帰国者を考える」というテーマで講演し、その理解のため事前に映画「にあんちゃん」のビデオを原告が被告大成建設に送り、事前に鑑賞した。
    ちなみに本社においては1999年7月3日、2000年7月28日、2002年3月15日、各々原告を講師として学習会が開催された。
  4. 2003年の春の定期交流会・学習会は、予定より遅れて7月18日に開催された。
    そのための準備として、5月28日、徳光総務室長と原告が、原告の事務所で打ち合わせを行い、7月中に学習会・交流会を行うこととした。打ち合わせの中で、KJ同友会の事業参入について、被告大成建設の現場の所長の間では、従来から同和関係者からの働きかけが多々あり、参入イコール「エセ」という固定観念が出来ているので、尼崎事件の教訓を再度正しく認識する作業が必要であることが確認された。また、交流会は食事を交えて行い、場所の設営は、原告が行うこととなった。
    続いて、7月7日に2回目の打ち合わせを行った。このときは、徳光総務室長が広島支店の管理部長に転任することになったため、新しい総務室長の藤田正之(以下藤田総務室長という)との引き継ぎを兼ねて、具体的な打ち合わせを行った。他に総務課長代理の村瀬泰明(以下村瀬課長代理という)も同席した。この日に学習会の日程と骨格が決められ、日程は7月18日、午後5時からとし、前半は尼崎事件についての学習会、後半はKJ同友会と被告大成建設関西支店の各室長を交えた交流会を行うこととした。
    7月16日、原告の事務所において、藤田総務室長、村瀬課長代理と原告が最終の打ち合わせを行った。7月18日の学習会では、尼崎事件の再認識を行うが、原告側の一方的な報告に終らないよう、後日事実確認のための文書を作成することとなった。7月18日の当日は、予定どおり交流・学習会が行われた。
  5. 7月25日には、秋の交流・学習会にむけて、原告の事務所において藤田総務室長と原告との間で、以下のことが合意された。
    ①大成建設とKJ同友会、在日コリアン人権協会との間の原点(差別事件の教訓)を確認するため、本社の詫間博康常務、関西支店副支店長、同建築部長との交流会を行う。
    ②秋の学習会については、8月から具体的な準備のための打ち合わせを行う。
    ③尼崎事件の教訓がどのようにいかされてきたかを検証するために総括を行う。内容は、事実経過を再確認(担当者が変わっているため)することで、当時の関係者にも出席してもらう。
  6. 続いて8月26日には、7月25日の出席者に加えて、被告大成建設関西支店建築部部長林一彦が出席し、秋の交流・学習会を尼崎事件の総括を踏まえて年内に行うことで合意した。
    10月1日、秋の交流・学習会について、最終的な詰めの打ち合わせを行った。場所は原告の事務所で行われ、出席者は、原告及び藤田総務室長、村瀬課長代理であった。学習会に向けて、原告は現在の関西支店の職員の在日コリアン問題に対する認識状況について藤田総務室長から報告を受けた。藤田総務室長の報告内容は、まず在日コリアン人権問題の基本的な考え方が理解されていないこと、研修はしているが、体系的にまとまった理解がされていないこと、また社内の人権担当者からの話と当事者(在日コリアン)からの話では、まるで迫力が違うこと、学習会の前に上映した「にあんちゃん」にはたくさんの職員が集まっていたこと、北朝鮮に行った在日コリアンの当時の時代背景がわかったこと、今回は、拉致問題に関するマスコミの報道姿勢の問題点を課題にしても良いと思うこと、前々回の柴田先生(聖学院大学教授)の講演は、在日コリアンに対して「かわいそう」という感覚と「アファーマティブアクション」との違いが職員の間で理解されていなかったこと等であった。
以上の報告を聞いた上で、徐正禹会長から以下の提案がなされ、合意した。
①学習会の内容は、2本立てとする。在日コリアンの人権問題の基本的考え方について、原告が講演する。マイノリティ企業の参入の意義については、アメリカで先進的な取り組みを経験してきた柏木宏大阪市立大学院教授に講演をしてもらう。日程は10月末から11月中旬とし、都合の悪い日をあらかじめ村瀬課長代理が原告に連絡し、それ以外の日で原告が調整する。
②大成建設関西支店の参加者は建築部長、総務室長、建築部所長以下30~40名とする。KJ同友会は、会員メンバー(人数未定)とする。時間は午後3時から5時までとし、講演は各々1時間ずつとする。

第5 被告北口の妨害行為

  1. 2003年11月13日、被告大成建設関西支店管理部長村上隆得、藤田総務室長、村瀬課長代理が、原告の事務所に訪れ、原告に対して「会社として人権協会との関係をもたない」ことを決定した旨を告げた。差別事件については、以前から総括を行うことになっていたが、これについては「社内で風化しないようにする」ということであった。決定の理由を聞くと、「以前から北口氏から関係をもたないようにと言われていたが、社の独自判断として人権協会と交流を継続してきた。しかし、最近は以前にもまして強く言われるようになった。」「人権協会と関係をもつことがエセ行為に加担することになる」と言われた。さらに「人権協会に対するさまざまな中傷は以前から聞いていたが、確たる証拠もなく、社としては判断できないし、また判断する立場にもないとの姿勢であり、また人権協会との交流から学ぶべき点が多いとの観点から交流を継続してきた。しかし、大成建設が加盟する大阪同企連(大阪同和問題企業連絡会、現在は大阪人問題企業連絡会)のなかで、在日コリアン人権協会と関係を維持しているのは大成建設だけであり、大阪同企連の中でも批判されており、これ以上関係をもつことがいよいよ困難になった」とのことであった。
    このような圧力に対して大成建設は「正しいとは思わない。部落開放同盟の北口氏が在日コリアンの問題でこのような行為をするのはおかしいと思う。だからこそ苦慮している。」との回答だった。在日コリアン人権協会と同様に被告大成建設が納得していないのであれば、被告北口と被告大成建設、在日コリアン人権協会の三者で話し合いを持つべきではないかとの原告の提案に被告大成建設も同意した。そこで、被告北口への連絡は被告大成建設から行うこととなった。
  2. 後日、被告大成建設の村瀬課長代理が、人権協会事務所を訪れ、被告北口は人権協会に会う必要はないとのことで、無理矢理参加させることはできないと報告した。原告が、会わない理由は何かと尋ねたところ、日本生命事件の事をしきりに口にしていたとのことだった。日本生命の件では、原告の判断は誤っていると言っており、また人権協会とつきあうことは差別を助長することになると言っていたとのことである。
    原告は、このような被告北口の姿勢をどう思うかと尋ねたところ、村瀬課長代理は自分もおかしいと思うと答えた。原告のおかしいと考える方向に行動せざるを得ないのであれば企業倫理の確立などおぼつかないのではないかとの問いに、自分も矛盾を感じているが、自分の立場としてはどうしようもない、前の担当者である徳光総務室長でも同じ事になるはずだとのことであった。
    原告は、話し合いが当面困難であるならば学習会も当面中止と言うことになるため、講師をお願いした柏木教授に一緒に謝罪し、理由を説明しなければならないと要請したところ、村瀬課長代理も同意した。
  3. 12月1日午後2時、大阪市立大学大学院梅田サテライト控え室で柏木教授、村瀬課長代理、梁優子(在日コリアン人権協会事務局員)及び原告の4人で話し合いを行った。村瀬課長代理は、柏木教授に対して学習会が中止になった原因について「北口氏から、徐氏は人権を金にかえた人物である。そのような人間に付き合うことは、大成建設が人権侵害をしていることになると言われた。しかし社としては大成建設と人権協会との間に曇りはないと確信している。大阪同企連においても人権協会とつきあうなという空気がある。大成建設としては、他の企業がどのような判断をしようとも姿勢は崩さずにきたが、もはや不可能である。三者の話し合いを持つために北口氏に連絡を取ったが、『話し合う必要は無い』と言われた。日本生命事件について、在日コリアン人権協会は差別事件にしようとしていると言われた。柏木先生から北口氏に連絡されて話し合いが実現すれば、大成建設は出席する。」と報告した。
    柏木教授は、双方から、話を聞いて主体的に判断するが、被告北口の話し合う必要はないという姿勢は如何なものかと思うという意見を述べ、柏木教授が被告北口に四者会談の話をすることとなった。
    その後、柏木教授が四者での話し合いを求めて被告北口に連絡したところ、被告北口は原告と会う考えはないとのことで、とりあえず原告抜きの3者(被告北口、被告大成建設、柏木教授)で会談をすることとなった。
  4. 2004年2月17日、上記の3者の会議がもたれた。最初に、被告北口が在日コリアン人権協会のさまざまな問題、とりわけ原告の個人的な問題(人権問題を起こした企業を脅し、法外な値段で資料を売りつけたり、実体のないコンサルタントの名目で資金を受け取っているうえ、こうして得た資金を個人的に着服しているなど)を指摘し始めた。
    さらに被告北口は「長年、人権協会を支援してきた。しかし、人権協会への批判の声を受け、人権協会の調査を行ったところ、『エセ同和』的な行為が目に余ると判断した。このため、人権協会を支援するようになった企業などに対して、付き合いをやめるように働きかけを行っている。今回の大成建設の研修にクレームをつけたのは、柏木氏が研修の講師になるからではなく、前半の部分で徐正禹氏が講師を行うためだ。大成建設が柏木氏に依頼して研修を行うのであれば歓迎する」と述べた。
    話し合いの大部分の時間は、被告北口が人権協会の問題を指摘する事で費やされた。結局話し合いは、これ以上進展することはなく終わった。
  5. 以上で明らかなように、被告北口自身が被告大成建設に対して関係を絶つよう、したがって学習会を中止するよう働きかけを行っている。また被告大成建設のみならず、他の企業にも同様の働きかけを行ってきた事も認めている。このため、大成建設は学習会を中止し、原告は講師料を受領することができなかったのである。
    部落解放同盟大阪府連合会書記長である被告北口は、大阪同企連(大阪同和問題企業連絡会、現大阪企業人権企業連絡会)に絶大なる影響力を持っており、その力を利用して圧力をかけたものである。大成建設の担当者の主張が急変したことからも、その圧力の強さが窺われる。
以上の事から、原告は講師料のみならず、所属する在日コリアン人権協会、KJ同友会の社会的地位、信用まで著しく損なわれ、その損害は計り知れないものとなった。
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